
マニュアルがいつも正しいとは限らない
クレーム対応マニュアルを整備し、活用している企業も多いことでしょう。マニュアルがあれば、誰でも迅速に、一定の水準のクレーム対応ができるようになります。しかし、マニュアルに頼りすぎることで間違った対応をしてしまうこともあるのです。マニュアル通りの対応なのにお客さまの怒りが収まらない
例えば、こんな事件がありました。お客さまが近所のスーパーでオレンジジュースを買い、家に帰って飲んだ後にパッケージを見ると、賞味期限が半年以上前であることに気づきました。幸いにして身体に異常はありませんでしたが、店には、お客さまからクレームの電話がかかってきました。店長は、すぐにお客さまのお宅に飛んでいって、ひたすら謝罪。豪華な手土産を渡して、賞味期限切れの商品を販売するという問題が起こったことについて
「現場担当者のミスでした」
「以後、そのようなことを繰り返さないように厳重に注意しました」
などと説明したものの、お客さまには納得していただけませんでした。
結局、お客さまの怒りは最後まで収まることなく、「もうおたくの店は利用しない!」と宣言。手土産も突き返され、話し合いは終了。店長としてはマニュアル通り対応をしたのに、クレーム処理に失敗してしまいました。
店長が失敗したクレーム対応の原因は?
クレームを言ってくるお客さまの目的は、次の3つに分類されます。・とにかく怒りをぶつけたい
・その店・企業に改善を求めたい
・あわよくば商品や金品をせしめたい
「怒りをぶつけてくるお客さま」に対しては、マニュアル通りの対応を遵守し、とにかく誠心誠意謝罪してお客さまの言い分をひたすら聞くことで丸く収まる場合があります。
しかし今回は、「お客さまがスーパーに改善を求めている」ことを考慮に入れるべきでした。店長がクレーム処理に失敗した原因は、マニュアルに頼りすぎで、お客さまが求めていることをちゃんと把握しようとせず、それに応えられなかったことにあります。
では、このような場合は、どのようなクレーム対応が最善なのでしょうか?
お客さまの真意を確認する事が最重要
まず、このスーパーは、お客さまにとって自宅から最も近い場所に位置するお店でした。利便性を考えれば今後もそのスーパーを継続して利用したい気持ちが強いであろうことは、容易に想像できます。その場合、お客さまが一番望むことは今後も安心してお店を利用できる状態になることです。つまり、上司や責任者を何人も連れて謝罪に来られても、豪華なお詫びの品を持って来られても、まるで見当違いということになります。
そもそも、賞味期限を半年以上過ぎた商品が売り場に存在するのは、スーパーの在庫管理や棚卸しチェックが杜撰だからだと、素人目からも容易に推測できます。また、従業員への注意喚起だけで再発を防止できるとも思えません。
お客さまは、きちんとした原因の説明はもちろん、これからも不安なく買い物が出来るように、今回の様な事が"ほぼ起こりえない"と確信できる解決策を求めていたのです。
「棚卸しや在庫管理の仕組みを変更して、構造的に起こりえない環境を構築した」、「賞味期限の確認作業の間隔を短くして回数を増やした」等々...
このような回答をできる限り丁寧にわかり易く説明すれば、お客さまも安心して買い物ができると納得したことでしょうし、「すぐに解決策を提示してくれた」とお店に対する信頼感が増すでしょう。
クレーム対応の仕方によっては、マイナスをプラスに持っていくこともできるわけです。
不当なクレームには「危機対応」に切り替えて対処する
さて、先ほどの3つのタイプのうち「あわよくば商品や金品をせしめたい」というタイプにはどう対処すればいいのでしょうか。これは経験則になりますが、詫び品を要求するお客さまは、要注意なケースが多いことが挙げられます。今回の事例で、仮にレシートだけでなく現物すら残っていないとしたら、注意度はさらに上がると考えて良いでしょう。
菓子折りを用意してきちんと相手の言い分を聞くことも必要ですが、まずは、お電話にてお客さまのご体調の確認を最優先し、病院での治療費を会社が負担することや現物やレシートのご用意の依頼をお伝えします。これは、3タイプのどの場合でも最初はお客さまの素性がわかりませんので、欠くことのできない手続きとなります。
3回以上対応してみて「誠意をみせろ」や「謝罪文を書いて持ってこい」などと無茶な要求が続き解決の糸口が見えないようでしたら、クレーム対応(顧客管理)から危機管理へと対応方針を転換します。この際は、一人で考えず複数人で判断してみましょう。
この時点で解決を急ぐ必要はなくなっていますので、自社でできる範囲を明確にし、それ以上の要求に対しては毅然とした態度で突っぱねることが必要です。また、場合によっては警察や弁護士への相談も考えるべきでしょう。
悪質なクレームに、お客さまとして付き合っていては、時間的にも金銭的にも、担当者の精神的にも多大な損失が発生してしまいます。そうならないためにも、どんなケースなら「クレーム対応」から「危機対応」へ切り替えるのか、指針を明確にしておくことが大切です。
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この記事を監修をしたのは

地村健太郎(ちむらけんたろう)
株式会社C-SOS
代表取締役社長
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〒143-8530 東京都大田区平和島1-1-2 NTTロジスコ平和島物流センタ7F
URL.http://claim-csos.com/
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