クレームの発生原因の1つに、「期待と現実との差」があります。
例えば、品質や効果を必要以上に大げさにアピールして消費者の期待を過剰に煽るような広告宣伝は、短期的には売上向上につながるかもしれませんが、長期的にはクレームを増やし、自分たちの首を絞めることになります。
カタログ値の「走行距離○km」は信用できない
先日、某自動車メーカーの電気自動車の広告を見かけました。そこには高らかに「400kmの航続走行距離を達成」とのうたい文句がありましたが、一般消費者の感覚からはズレを感じます。メーカーが公表する航続走行距離の数値は、実態とは異なります。400kmとの表示は、人の感覚や条件などによるズレをなくす目的で国土交通省が定めた測定方式での数値にすぎないのです。おそらく実際の走行距離は200km前後でしょう。カタログ値と実際の使用での数値とは大きな乖離があるのです。
決められたルールに則っている数値とはいえ、消費者としてはなんだか釈然としませんよね。ちなみにこの車はアメリカでも販売されていますが、アメリカ基準の走行距離表示では240kmとなっていますから、実態に近いといえます。
期待感を煽る表現は、自社の首を絞める結果に
スマートフォンやパソコンなどの電子機器、電気製品でも、カタログ値と実際の数値がかけ離れていることはよくあります。そのことを知らない消費者は、カタログ値をそのまま信じて、過剰な期待をしてしまうこともあるでしょう。なかには、買った後にクレームを入れる人もいるのではないでしょうか。自動車や電気製品に限ったことではありませんが、誇大広告とまでは言えないものの、消費者に過剰な期待を抱かせるような大げさな広告宣伝をたまに見かけます。
「一度食べたら忘れられない絶品の味!」
「痩せすぎ注意! モデル御用達のダイエットサプリ」
「凍った路面でもしっかりと止まれるスタッドレスタイヤ」
といった具合に。そして実際に利用してみると、広告に謳われているほどの効果やメリットは感じられないケースがほとんどです。
このように過剰な期待を抱かせる広告宣伝は、クレームの元となります。期待感を煽れば煽るほど現実とのギャップが大きくなり、消費者に失望・残念感を感じさせ、企業への不信感や怒りにつながってしまうのです。
過剰な期待を抱かせない、成城石井のさじ加減
広告宣伝ですから、アピールしたい点を強調するのは当然です。とはいえ、実力以上にアピールしすぎるのは考えもの。消費者の受け取る印象と実態との間に、なるべくズレがないような表現をすることが大切です。独自の品揃えや高品質なサービスで人気の高いスーパーマーケットの成城石井などは、そのあたりのさじ加減がちょうど良い会社です。
成城石井が実施している広告宣伝といえば新聞折り込みチラシや店頭のPOP、自社ホームページくらいのものなのですが、たとえば店頭POPを見ても、過剰な期待を抱かせるような内容ではありません。
製品の特徴や味、産地、調理の仕方など、事実を淡々とありのままに伝えることが基本であって、大げさな表現や、「うまい!」などの主観的な言葉もあまり使っていない印象を受けます。
その理由はおそらく、商品そのものに力があるからではないでしょうか。消費者の要求に合う良質な商品だけを選定し、適切なタイミング、適切な価格で提供する。スーパーマーケットの根幹ともいえる商品力に自信があるからこそ、過剰な広告宣伝をしなくても、お客様は買ってくれるし、お店のファンになってくれているのです。
電気自動車の走行距離などは、他社製品と比較しやすいように、一定の基準に従って表示しているわけで、誇大な表現とはいえません。しかし、それを大々的にアピールすれば、消費者に過度な期待を抱かせることにもなります。
もし、広告宣伝の内容が、消費者に過剰な期待を抱かせるようなものにならざるを得ないのであれば、期待値と実際のズレを埋めるように努力をするべきではないでしょうか。たとえば、消費者に正しい知識を持ってもらうための啓蒙活動をするといったことも、その一つです。
いずれにしても、「自社の主張」と「消費者が受け取る印象」の間にある溝を埋めるような努力をすることが、クレームの発生を未然に防ぎ、延いては企業の信用を高めることにつながるのです。
この記事を監修をしたのは
地村健太郎(ちむらけんたろう)
株式会社C-SOS
代表取締役社長
代表取締役社長
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