クレームは定性的で漠然としたものですが、それを科学的に分解していくと商品・サービスの改善点や改良点、新たなビジネスへのヒントが見えてきます。クレーム対応は、普段あまり接することのないエンドユーザーとの貴重な接点だからです。
クレーム対応のケースを分析することで見えてくるものがある
クレーム対応のケースを記録として残している企業は多いと思いますが、それを分析して役立てているという企業はどれくらいあるでしょうか。クレーム対応のケースはそれぞれ別物であり、一つとして同じものはありません。しかし、データを分類・分析することで、ある程度の傾向をつかむことはできます。そこからクレーム対応品質の向上や商品・サービスの改善に役立つヒントを見つけ出すことが可能です。
例えば、「○○○というキーワードを使ってはいけない」「このようなトークをすることで、お客さまの怒りを増幅させることがなくなる」といったように、クレーム対応時に使えるノウハウを共有できるようになります。
また、商品について発生するクレームとその傾向を分析することで、正常・異常の判断基準を持つことができるようになります。
「○件以上のクレームが発生した場合、異常値として開発部門に情報を上げる」といったように、組織全体としてクレーム対応ケースを活かす体制づくりにつなげられます。
お客さまにとっても、自分がクレームを言ったときに、対症療法的に処理されるだけでは、納得はしても満足することはできません。しかし自分のクレームに対してきちんとアクションを起こし、改善につなげてくれる企業に対しては、信頼感や満足感を抱くことができます。
保険の事故処理を丁寧にしたことでNPSが大幅に改善した
クレーム対応の方法を変えることで、企業に対する愛着や信頼度がどのように変わるかを調査した興味深い事例があります。損害保険会社の事例です。その損害保険会社の事故対応窓口では、事故の受付や示談交渉などを行っています。事故対応の際、お客様やその事故の相手方は感情的になっていることがよくあります。電話越しに怒りをぶつけてこられることもよくあります。
それに対応する担当者は、あくまでも規程に基づいて一つ一つ話を進め、保険金の支払いなどを行います。しかし、事務的に話を進めると、最後には「ふざけんじゃねえ!」「覚えてろ!」などと暴言を吐かれてしまうことも多かったのです。
そこでその損害保険会社では、事務的な対応に先んじて、「それは大変でしたね。私もあなたの立場ならそう思います。」などと相手方の立場を思いやりながら、寄り添う対応をするように改めました。
事務的で冷たい対応をしても、優しく丁寧な対応をしても、保険金の額は変わりません。約款に従って処理をして、約款通りの保険金を支払うだけです。しかし声のトーンや言葉を変えるだけで、怒りにまかせて暴言を吐いてくるお客さまは減り、「あなたに担当してもらってよかった」と感謝さえしてくれる人が増えたのです。
クレームは貴重で最高の顧客接点
その後、その損害保険会社では再度NPS(ネット・プロモーター・スコア。以前の記事を参照)の調査を行いました。すると、事前の調査に比べ大幅に数値が改善していたのです。これは、その会社に対する「批判者」が減り、「推奨者」が増えたことを意味します。お客さまが企業に対して自発的に意見を言ってくることはあまりありません。クレームは、苦情や不満といったものがほとんどですが、お客さまが直接企業にアプローチをしてくる数少ない機会といえます。
これを貴重な機会ととらえて、次につなげるアクションができるかどうかで、企業に対するお客さまの信頼感や満足度が向上し、延いては競争力の強化につながるのです。
【関連書籍】
この記事を監修をしたのは
地村健太郎(ちむらけんたろう)
株式会社C-SOS
代表取締役社長
代表取締役社長
〒143-8530 東京都大田区平和島1-1-2 NTTロジスコ平和島物流センタ7F
URL.http://claim-csos.com/
URL.http://claim-csos.com/
0 件のコメント:
コメントを投稿